■HIV
HIVとは、ヒト免疫不全ウイルス (Human Immunodeficiency Virus)の頭文字を取ったもので、ウイルスの名前
カビやウイルスなどの病原体から守る(このことを"免疫"といいます)のに大変重要な細胞である、Tリンパ球やマクロファージ(CD4陽性細胞)などに感染するウイルスです。HIV
免疫機能が低下し、健康時には抑えられていた病原性の弱い微生物やウイルスが暴れだし、さまざまな病状が現れ「日和見(ひよりみ)感染」などを起こします
■以前は「イコール死」というイメージがあったが、今はコントロールできる疾患になっている
HIV感染症、エイズと聞くと「必ず死にいたる」というイメージを持つ人も多いでしょう。しかしいま、HIV感染症は死なない病気になりつつあります
完治は困難で薬の服用が継続される。一方で、平均余命は治療により非感染者とほぼ同水準まで延長されているとする研究も報告されている
■感染経路についても明らかになっている
HIVは血液、精液、膣分泌液、母乳などに多く分泌されます。唾液、涙、尿などの体液では他のヒトに感染させるだけのウイルス量は分泌されていません
「患者さんに刺した注射針を間違えて自分に刺した」という医療者の針刺し事故でも、感染率はB型肝炎で30%、C型肝炎では3%ですが、HIVでは0・3%
性行為による感染では、性分泌液に接触することが最大の原因である。通常の性行為では、女性は精液が膣粘膜に直接接触し血液中にHIVが侵入することで感染
■このようなHIVだが、未だに偏見や差別があるという
感染している人への偏見や差別は根強く残り、就職や人間関係で悩みを抱える人は多い
就職しようとしたHIV感染者の男性が、感染の事実を病院に予め告げなかったことを理由に病院側が就職内定を取り消した
その子は生後28日の低体重の女の子で、生まれ持ってHIVを患っていた。10世帯の家族に断られ続けていた
養子を断られるという事例も。
■一気に環境が変わってしまうことも
勤務先のゲイバーのママに、HIVに感染していることを知られたからだ。「(隠していたことを)訴える」「同じ家で暮らせない」と言われ、居候先のママの家を身一つで飛び出した
一緒に働きたくないとか異動させて欲しいとかいう人も大勢出るだろう。感染者はたった1人なんだから、悪いけどその社員には早く辞めてもらうしかない
HIV抗体検査で陽性だったことを理由に従業員に退職勧奨をした職場がありましたが、裁判で解雇権の濫用により無効とされています
■恋愛でも
ゲイコミュニティ内でもHIV感染者に対する偏見やスティグマは未だ根強く、国内でも感染者に対する偏見や差別が度々問題になっている
2017年には、都内の婚活サービス「リザライ」に登録しようとした男性が、HIV感染者であることを理由に登録を断られた
「HIV=感染」というイメージだけが一人歩きしてしまい、こういった医療の進歩や、患者の精神的負担についての認知が置いてけぼりになってしまっている